退行催眠療法
学生時代、たまたま図書館で退行催眠療法という本を手にしました。興味を引かれ読み始めてみると、その面白い内容にあっという間に引き込まれていきました。あまりに面白いのでこの手の本を何冊か読み漁っていきましたが、その中でも特にアメリカの精神科医BrianWeiss博士の書いた本が興味深いものでした。 現在クライアントが抱えている問題を、催眠誘導で深く探って行くと、まだ小さい子供時代の出来事が潜在意識下で現在の行動パターンに影響を与えているケースがある事が分かって来るのです。
そうした場合、その問題となっている小さい頃のトラウマ体験をイメージの中で書き換えたり、違う捕らえ方に誘導したりして解決する事によって、現在の問題も解決に向かうといった内容なのです。 そして更に興味深い事に、ある時BrianWeiss博士はいつものように問題を探るべくクライアントに退行催眠をかけていると、どんどん退行して子供の時を通り越してしまい、ついに前世にまで行き着いてしまうのです。この時、前世の存在など全く信じていなかったWeiss博士は困惑するのでしたが、目の前のクライアントは鮮明にその様子を語り、知るはずの無い外国語を流暢にしゃべったりするのを目の当たりにして前世の存在から目を反らせなくなって来ます。 そんなある日、現在の水恐怖症が、退行催眠で前世の船乗りだった頃にまで戻り、その人生の最後で水に溺れて死んだという事を再体験する事によってその水恐怖症が治ってしまうという事態まで起きたのです。
運命の赤い糸
更に、ある時、男女問題で悩むお互い全く見ず知らずの男性クライアントと女性クライアントが同じ時期にWeiss博士を訪れて来ました。 各々に退行催眠誘導して行ったところ、何と驚いた事にその2人は全く同じ時代、同じ町での過去世を語り出したのです。催眠誘導を重ねて行くうちに、その時代に2人はお互いに強く愛し合ったパートナー同士であった事が分かったのでした。 この事実を知っているのはWeiss博士一人であり、彼はその事を2人に伝えて良いものか非常に悩みました。プライバシーの問題にかかわってくる一方、この事を伝える事で2人各々の問題の解決につながる可能性が非常に高かったからです。悩みぬいた結果Weiss博士は2人のセッションを同じ日の隣り合わせの時間帯に予約して、2人が自然に接点を持つようにしWeiss博士自身は彼らに
何も伝えず後はただ成り行きに任せる事にしました。 このセッション時間の設定を何回か合わせたところ、すれ違いざまに顔を合わせるうちに2人は自然に惹かれ合って行き、各々の問題の解決に至ったのでした。 Weiss博士は、この様に多くの過去世で何回も共に生まれ変わり深く係わり合いのある人たちをソウルメイト(魂の伴侶)と呼びました。いわゆる「運命の赤い糸で結ばれている」とはこの事を指しているのかも知れません・・・・・・。
私は早速、日本でその技術を教えている所があるか調べてみました。何箇所か見つかったのですが、ココは!と思う所はある程度の期間が必要でかなり高額な料金が必要でした。時間的には問題なかったのですが学生であった私には到底払えない金額だった為、いつしかそのまま催眠療法については忘れていました。
運命の再会
医師になって数年の月日が経ったある日。たまたま近くの本屋を散策していると、突然目に「催眠療法」と書かれた本の表紙が飛び込んで来たのです。とっさに学生時代の記憶が蘇り、手に取り内容に目を通すと、やはり興味深く是非とも勉強してみたいと言う気持ちが湧いてきました。 そしてその本の最後のページをめくると、丁度いい事に催眠療法を教えている場所の連絡先が書いてあったのです。その連絡先をメモにとって、早速連絡してみると学生時代に目をつけて1回連絡を取っていた所でした。やはり高額でしたが丁度タイミング良く、もうすぐ新しいコースが始まるところだと言います。今なら何とか都合出来る額ではありました。しかし問題は何ヶ月もの間、週末に授業が行われ、しかも場所は都内で途中一回でも欠席すると卒業認定は出来ないという条件でした。 当時私が住んでいたのは、関東圏内ではありましたが、東京まで2時間以上はかかる場所であり、職業柄重症患者さんが入院していると何時病院から呼び出しがかかるか分からず遠くに離れられないのでした。そんな環境ですから何ヶ月もの間、確実に授業が行われる週末を空ける事が出来る保障は何処にも無かったのです。
学生時代は「時間はあるがお金が無い」今は「お金はあるが時間が無い」中上手く行かないものです・・・。
しかしここで諦めたらもう学ぶチャンスは無いだろうと思い、「何とかなる」と言う確信の下に申し込み手続きを取ったのでした。
とうとう念願の授業初日、期待に胸を膨らませながら会場に向かいました。会場に集まった生徒達は、高額という事もありほとんどが30歳代以上でした。
そして文字通り北は北海道から南は沖縄まで全国津々浦々から泊りがけで集まって来ていて、その意気込みに驚かされました。
彼らに比べたら私は関東圏内に住んでいると言うだけで十分近い好条件に恵まれていたのです。 参加した動機はセラピストを目指す人から、自分自身を見つめ直したい人、本を読んで興味を持った人、現在の仕事に応用したい人など様々でした。
このクラスでは、毎回先生の授業が始まる前に、生徒1人1人が皆に向かって、前回から今回までに、自分に起きた変化や体験談、今後どうして行きたいのか、等について順番に語りシェアー(分かち合い・共有)してゆきます。
このプロセスにより年齢・性別・職業の全く違う生徒同士がお互いにより深く分かりあえ、また自分以外の人の催眠療法の効果を感じ取る事が
出来るのでした。 そしてそこで出来た「信頼関係」が、無意識の内に心の奥底に抑圧してしまい込んでいる自分の「認めたく無い部分や感情、嫌な出来事」を
開放する際に大切になってくるのです。 この信頼関係を「ラポール」と呼び誘導催眠の際は最も重視されるのです。
信頼できない人には心を開放出来ませんからね。
では実際退行催眠とはどのような物なのでしょうか?
まずは意識の概念から見て行きましょう。
意識の概念
私達の個人の意識の内、大体10%は「原始の意識」と言い生まれながらに持っている本能や衝動など生来持っている意識活動を支配しています
(前世?の物もここに含まれます)。人間は成長するに従って原始の意識の上に無意識(潜在意識)と呼ばれる意識を積み上げてゆきます。(意識の大体80%を占めています)その無意識のプログラミングの仕方には次の2通りが考えられています。
- 周囲の出来事をそのまま、良い・悪いに関係なく刻み込まれてゆきます。
- 体験をどのように(positiveまたはnegative)受け止めたかを刻み込んでゆきます。
成長して7〜13歳になると潜在意識の上に薄い膜が出来てきます。これをclitical factor(エゴ)と呼びます。
そしてこれより上の意識が普段自分で意識している表在意識(顕在意識)です。この意識は全体意識の約10%を占めていて、
ここには理論、理性、知識、意思等が含まれています。
ユングは、私達個人個人の無意識はその根底で皆お互いに繋がっていると考え、それを集合無意識と呼びました。
この意識の概念は、海に浮かぶ氷山に例えられます。
水面から顔を出した約10%の部分を表在意識とすると、水面下にもぐっている大部分が潜在意識(無意識)なのです。
そして水面がclitical factor(エゴ)に相当するのです。そして氷山は周囲の水を通してお互いに繋がっているのです(集合無意識)。
また、ミルククラウン(王冠現象:粘性の少しある液体の液面の上に一滴垂らすと綺麗な王冠状になる現象)で例えて言うならば、
先端に飛び出して出来た球の部分を表在意識とすると、その下に尖がって伸びている土台の部分を潜在意識と考えても良いでしょう。
先端の球の部分は周囲から独立・分離している様に見えますが、飛び出している基礎の土台はその根元でお互いに繋がっているのです(集合無意識)。
さて、ここでは個人の意識に限定して考えてゆきましょう。顕在意識で「何かをしよう」と考えた時、それが潜在意識の意向(衝動)と違っていると、
大体80%対10%の力の差があるため顕在意識の思う通りに事は進みにくいのです。
逆に言えば、潜在意識からの声(衝動・閃き)に従って顕在意識が感じ、行動を起こすとスムーズに事が運び易くなるという事です。
私達の否定的な癖、習慣、色眼鏡、行動などはこの潜在意識に組み込まれた「negative」な意識に無意識のうちに影響されている事が考えられるのです。
(通常は私たちは「否定」の段階で生きていると言えます、それはつまり『苦しみ、悲しみ、怒り』等を上手に抑え込んで社会に適応しているのです。
その反動で中毒や病気を引き起こしているのです。)
退行催眠によってまだ子供の頃の「negative」を組み込んだ時(辛い体験をもう1度する事で「認識」してゆく)に戻って、それを違う見方で再体験し
「positive」に転化したり、暗示を組み込む事によって「positive」な意識を追加してゆく事が出来るのです。
こうして普段自覚しない自己の深い内奥の意識を変容させる事で、周囲の世界に対する捉え方、や色眼鏡がpositiveな物へと変わってくるのです。
それが「癒し」であり、そうする事によって自分の周囲や行動も変わって来ると言うのです。
催眠について
催眠とは術者にかけられ、思うがままに操られる物ではなく、自分で入ってゆくものなのです。催眠術師は誘導する事によって、ただそのお手伝いをするだけなのです。 ですから被験者の意識は、はっきりしていて催眠術師の思いのままにはなりません。
10人に催眠をかけると1人は催眠にかからない人がいます。
それは脳に器質的な疾患を抱えていたり、自ら自分の全て出したくないとBlockをかけてしまっている人です。
これらの人でも繰り返してゆくと催眠に入れる事が多いようです。
残りの9人は催眠にかかりますが誰でも同じようにかかると言う訳ではありません。
3人は完全退行と言って完全にその時に戻って再「体験」するグループです。
また、3人は映画を見ているように客観的に過去の自分を「見て」いるグループです。これは視覚的な人に多いです。
そして残りの3人は感覚的な人です。何も見えなくても色々な感情や感覚を「感じて」体験しています。
どのタイプであっても効果に差があるわけではありません。
必ずしも映像が必要なわけでは無く、感じ方にその人なりの得意・不得意があるのです。
催眠の導入法
導入には色々な方法があります。ゆっくり全身をリラックスさせて行く段階的なリラクゼーション法(これは自律訓練法とよく似ています)から、ちょっと驚かせてそれをきっかけに、さっと導入する急速導入法(rapid induction)まで様々です。
各々症例に応じて上手く使い分けるのが良いのでしょう。
自律訓練法(Autogenic Training)とは、精神科の催眠療法から生まれた治療法です。1980年大脳生理学者ボルゲットが、自己暗示により催眠と似た状態になりうることを発見し、それを、精神科医シュルツがさらに発展させたのです。
他者から誘導催眠を受け深い催眠状態に入ると、多くの人が体験するある共通の身体感覚の特徴があるのでした。その時に感じる身体感覚の特徴を
順番に自分に自己誘導して再現してゆくと、過度の緊張がとれ、疲労が回復し、自律神経のバランスを回復させる事で血流が良くなり、
呼吸が落ち着き、胃腸の働きも良くなり心身共により健康に向かうようになったのでした。
自律訓練法とは自己誘導によって、体と心の緊張を低下させる治療法なのです。
日本には、第二次世界大戦後に紹介され佐々木雄二、池見酉次郎、松原秀樹、の呼びかけにより「日本自律訓練学会」が設立されています。
現在でも広く普及していて、多くの心療内科・精神科で取り入れられています。
ここでは、その内容を簡単に上げておきます。
まず気持ちをリラックスさせます。それが出来たら次の順番に従って1つずつゆっくり自己誘導暗示をしていきます。
- 手足が重たい感覚
- 手足が温かい感覚
- 脈がゆったり規則正しく打っている
- 呼吸がゆっくり楽になる
- お腹が温かい
- 額がスーッと涼しい
この様な感じで自己誘導して行くのです。
こうして深い催眠状態に誘導していったら、次は年齢退行を誘導していきます。
退行誘導
ここでは簡単に退行誘導の流れの一つの例を紹介してみます。
他にも色々な方法があるので、これはあくまでも一例です。 「10から1まで数えると、子供のころの楽しかった頃へ戻ります。
数を数えると、どんどん楽しいい気持ちが体中に広がってゆくのを感じてください。(すこし時間を置いて少し早口に)
10・9・8どんどんどんどん過去へさかのぼって7・6・5子供のころの楽しかった頃の記憶がよみがえってきます。
4・・1(時間を空けて)・・・・・・・・・・・・・・・・・どんな感じ?・・・・・・・
楽しいね、今子供の頃の楽しかった頃にいますよ。」 暫く楽しかった頃のを再体験していると何か痛みが引っ掛かってくる事があります。 なければ、次に10から1まで数えて子供のころの
辛かった事を思い出すように誘導します(しつこく隠している感情を引き出します(認識))。
「10数えるともっと辛かった所へいきます。10・・・9・・・8・・・・・・1
・・・いま、いくつ?・・・・・・・どんな感じ?」
こうして小さい時の辛かった時を徹底的に再体験してもらうのです。
幼い時の辛かった体験の多くは「両親との関係が上手く行かなかった」、「誤解された」などと言うものです。
この頃の何気ない小さな心の行き違いがその人の物の見方に大きく影響を及ぼし、知らず知らずの内に人生に大きな影響を与えているのです。
術者はクライアントに共感する事でその感情をどんどん湧き出させてあげます。
「苦しいね、ふーんそうなんだ、辛いね、我慢しなくていいよ、どうしてほしいの、分かってほしいね、・・・
どんな気持ち? ・・どうして分かってくれないのかね。
辛いの分かるよ。・・・・どうしてみんな分かってくれなかったと思う?」
ここで、辛かった感情がこみ上げて涙を流すケースも少なくありません。
「怒り」の意識は相手に向かい、「悲嘆」の意識は内面に向かいます。
十分に辛かった時を体験したらそれを「許し」の段階へ導いてあげます。 ここで大切な事は、この「許し」は術者が「する・させる」物ではなく、クライアントの中で自然に「おきる」物なのです。
認識が変わるように見方を変えてあげる。物の見方が変わるように上手くサポートをするのが術者の腕の見せ所という訳です。
- 頑張るのやめようか
- お母さん(お父さん)も大変だったのかなー。
- お母さん(お父さん)もどうして良いか分からなかったんだね。
- そんな風に考えたらお母さん(お父さん)の事許せる?
楽になるね。ほっとするね。 そんな気持ちが体の中に広がってくるね。今はどんな気持ち?
- 時間を取るからゆっくり感じてて・・・・・・・・・・。
この様に、辛かった体験を別の角度から捉える事で感情を書き換えてみるように誘導するのも1つの方法です。
この際、どのように捉え直すか決めるのはあくまでもクライアント自身なのです。
こうして受容、変容した後、催眠状態から徐々に戻して行きます。
「1から10まで数えると徐々に意識がはっきりしてきて目が覚めていきます。1・・4段段すっきりと体にエネルギーが沸いてきます。
5・・8さあ目覚めますよ。意識がはっきりするにつれすがすがしい気持ちになってきます。9・・10さあゆっくりと目を開けて下さい。」
ここまで来ると、大抵の人がすっきりした表情になって目を覚まします。更に授業では、小さい時の記憶だけに留まらず、お母さんのお腹の中に
いる時の記憶、そして生まれる前の前世?の記憶にまで遡ってお互いに
誘導し合い感情を開放して行くのでした。
セッションが始まると、早々に感情を再体験して泣き出す女性の声が部屋の中に響いてきます。女性の方が感情を出しやすいのでしょう。男性は「男が泣くなんて恥ずかしい」と言う社会通念に縛られてしまい、なかなか泣く事が難しいようです。それでも退行誘導を何回も
繰り返されて行くと、しっかりしていた(泣きそうもない)男性が急にオイオイと泣き出し、閉じ込めていた感情を
開放して周囲を驚かせました。
過去生退行では今まで「私、催眠に全然かからないのよ」とぼやいていた女性が急に大声で悲鳴をあげ(過去生の中で)「旦那さんが戦争に借り出されるのを引きとめようとした」等、劇的な体験をする人も沢山出てきました。
私の前世?退行体験
私自身は、幼い時の記憶では、あまり辛い体験を思い出す事はありませんでしたが、前世?の記憶では次のような場面のイメージが沸いてきました。
一回目のセッション
ワラジを履き、ちょっとした鎧を身にまとい、無精髭を生やし、髪の毛はボウボウのまま荒野に立ちすくむ武士でした。
薄暗い夕暮れ時、周囲は乾いた土で草木はほとんど生えていません。そこには寒い木枯らしが吹いています。
その後誘導にのって、場面が移り変わりました。今度は何か、復讐の為に敵の家に向かって一人、舟を漕いで川を下っていました。
夕暮れ時になって、そのまま川岸に舟を横付けすると、塀を乗り越え敵の屋敷に侵入し木の陰から敵の様子をよーく伺っています。
でも誰かに見つかったのか、また先ほどの塀を乗り越え急いで舟に乗り込み、川へ漕ぎ出しました。どこか後悔しているような感覚を覚えました。
二回目のセッション
自分は山奥のお寺で、お坊さんの下に弟子入りしている小坊主でした。 2人きりでそのお寺に住んでいて、よく一緒に瞑想しているようでした。
私は毎朝近くの滝に水を汲みに行くのが仕事になっていました。ある日、いつものように水を汲みに行って戻ってくると、お寺が山賊達に荒され、
お坊さんは殺されてしまっていたのです。それはそれはショックでした。とても尊敬していた大好きなお坊さんだったからです。
それ以降と言うもの、そのお寺に死ぬまで一人修行に励みながら暮らし、誰にも気付かれずにひっそりと死んで行きました。
自分がいよいよ死んだ時、私の意識は体から抜け出して、そのお寺の壁に掲げてあった竜の絵に乗り移りました。
すると、私の意識を宿したその竜は絵の中から飛び出して、天高く昇っていったのでした。
三回目のセッション
誘導にのって深い催眠状態に入って行ったところ、急に右足が痛くなってきました。 どうして痛いのか良く分かりませんでしたが、とにかく痛いのです。
この時、周囲の状況は良く分かりませんが、痛みの感覚だけが襲ってきます。
現実の私はリクライニングチェアーの上で、ただブランケットをかぶって横たわっているだけですから何処かに足がぶつかっているなどと言う事はあり得ません。 そこで、更に誘導してもらい周囲の状況を確認しました。すると私はどうやら大きな岩の上に「生贄」として寝かせられ手足を縛りつけられているようなのです。
その縛り付けている縄が特に右足に食い込んで痛かったのです。
周囲にはもう誰もいません、日は落ちて周囲は薄暗く寒くなって来ています。そんな中、一人で右足に食い込む縄の痛みと戦ったいたのでした。
あまりの痛さにこれ以上セッションを続ける事は出来なかったので、この時は上手く痛みを開放するよう誘導してもらいながら終了としました。
この様に「幼い時」の感情、更に退行して「前世?」までの感情を開放してゆく中で、生徒達は色々な変化・変容を遂げて行きました。
一人でこのセッションを受けているよりも、多くの生徒達の変化を数ヶ月に渡って目の当りにする事でその効果をより深く感じる事が出来たのです。
中途半端な夫婦関係にケジメをつけた人。子育てを終えてからやりたい事が見つかりスクールに通い始めた人。自分の新たな可能性を見出し今の仕事を辞めた人。人生のどん底から這い上がって立ち直った人。自分のやりたい事を実現するべく起業した人・・・・。
この様な生徒達の現実世界での前向きな変化には驚かされました。
前世は存在するか?
さて、「前世」は本当に存在するのでしょうか?
ユングは個人の「無意識」の更に奥底に、人類共通の経験貯蔵庫である「集合的無意識」の存在を考えました。
そう考えると私達が退行催眠によって「集合的無意識」のレベルに達した時、そこに記録された別の人生の経験を引き出して来る事も可能だと言うわけです。
退行催眠誘導によって私達は、「自分の過去生というものが存在し、その記憶を思い出しているのでしょうか?」それとも「人類共通の集合無意識の中に存在する別の人生の記憶を引き出しているだけなのでしょうか?」。
どうしても気になっていたこの質問を私は先生に投げかけてみました。
すると先生はこう答えてくれました。 「前世があるかどうかなんて本当の所は誰も分かりません、でも前世?と思われる時の感情を再体験する事で現在の『あなた』がより良くなればそれで
良いではないですか。この退行催眠誘導では、今の『あなた』が、より良い『あなた』に成長する為に一番必要な感情や体験が自然と沸きあがって来るのです。
その沸きあがってくる感情や体験が前世の物であろうと集合無意識に存在する別の人生の記憶だろうと、それはどうでも良い事なのです。
現在の自分が気に入らないからと言って前世に栄光を求め、『私の前世は王様だった』とか、『私はお姫様だった』とか言って満足する事は現実逃避以外の
何物でもありません。前世お姫様だったから・・それで?今のあなたはどうなの?と言う事になるのです。」
これを聞いて「なる程」と納得しました。
前世療法と聞くと多くの人が自分の輝かしいであろう?前世を期待してしまうのですから・・・・。
でもそんな事はどうでも良かったのです、乞食だろうと王様だろうと、実際「療法(成長)」が必要なのは「過去」では無く、
正に「今現在のワ・タ・シ」なのですから。
Brian Weiss博士の講義
そして、その翌年ついに、私に前世療法への興味を導いてくれた、Brian Weiss博士から直々に講義を受ける事に成ったのです。
そこはニューヨーク州ラインベックの自然に満ち溢れ、現代文明とは隔絶された林の中で行われました。
そこでの授業に必要な一群の建物を除いては周囲に建物は見当たらず、お店なども当然ありません。生徒達が宿泊する為の小さなキャビンが何棟か点在し、そこに2人一部屋で泊まりました。 部屋にはテレビやラジオ等は無く、聞こえてくるのは自然のさえずりだけでした。朝になると丁度、日の出の頃、鳥のさえずりが「目覚まし」となります。ピーピッピ、ピピー。ここでの生活では朝に弱いはずの私は信じられない位早起きでした。 早く起きると早速自然の中に朝の散歩に出かけます、少し林の中を探索して行くと美しい湖があります。そして朝から鴨やアヒル等の水鳥達がスイスイ列を成して泳いでいました。朝の時間を利用して太極拳や瞑想、ヨガなどをしている人たちも見受けられます。
軽い朝食を済ませた後、いよいよWeiss博士の講義となります。参加者の自己紹介を聞いていると生徒達は世界中から集まっていました。
ヨーロッパ・インド・中国・カナダ・オーストラリア・アメリカ・・・・・・
そして日本(私です)!。 その職業も精神科医、内科医、カウンセラー、レイキ・ヒーラー、ヒプノセラピスト、気功師、整体師、教師、サラリーマン、
学生、主婦など様々でした。 講義はWeiss博士の前世療法を始めた経緯、実際の症例報告、質疑応答、退行催眠実演などを含めた形で、
一週間弱の期間をかけてゆったりと進行して
行きました。 ここでその講義の内容の一部をご紹介しましょう(記憶に基づいて書いてありますので全てが正確ではない事をお断りしておきます)。
Weiss博士が前世療法を始めた経緯
皆さんはきっと医師であり、科学者でもある私が、なぜ輪廻転生などというものをテーマにしているのかを奇妙に感じるかもしれません。
それは私にとっても、20年程前に最初の本を書くきっかけとなったキャサリンと出会うまでの人生ではとても考えられない事でした。
私は1966年にニューヨークのコロンビア大学を卒業後、エール大学の医学部に入学し1970年には医学博士の学位を取得しました。
その後、いくつかの医科大学で教えてきましたが、フロリダのマウントサイナイ医療センターでは11年間にわたって、精神科医長を努めました。
20年程前キャサリンと出会うまでに、私は40以上の論文を発表し、精神薬理学と脳科学の分野では国際的に認められるようになっていました。
当時の私は、アカデミックな面でも職業的な面でも幸福で、特に変化を必要とはしていませんでした。
そして、超心理学などの「非科学的」な分野に対しては完全に懐疑的でした。過去生や輪廻転生といった事柄には無知に等しく、また知りたいとも
思っていませんでした。
私が最初キャサリンに出会ったとき、彼女は20代後半の女性で「鬱」や「神経症」「パニックディスオーダー」といった物に悩まされていました。
私はまず、薬物を使った治療を試みました。しかし約1年半の治療にもかかわらず、彼女の症状は一向に改善しなかったのです。
そこで最終的に『催眠療法』と言われる治療を行ってみたのです。
私は、キャサリンに出会う前から、精神科の治療に『催眠療法』を使っていました。
これは、集中した状態で深いリラクセーションを得るもので、子供時代への退行を主に行うものです。
私の言う催眠療法とはテレビなどでやっている、見世物としてのいわゆる『ショー催眠』とは異なるもので、施術されている本人が望めば、いつでも離脱することは可能ですし、本人のコントロールを失ってしまうなどという事はないものです。テレビのショー催眠では、催眠術者が思い通りに被験者を操って犬やアヒルの鳴き声をさせるような場面がありますが、本人の意に反して
コントロールされると言うのは、催眠状態を説明するうえで正確ではないのです。あくまでも、本人が施術者の言う通りにしようという意志がある場合にのみそれに従うのです。
実のところ、気が付かないだけで私達は毎日のように催眠状態を経験しているとも言えます。例えば、本や映画などに集中していると、周囲の雑音が
気にならない事があります、それも一種の催眠意識状態であると言えるのです。このような時でも、決して自分のコントロールが失われたりする事は
ありませんよね。意識して周囲にも気を配る事も出来るわけです。
催眠療法は、安全な物なので本人の意に反したことを強制されるような事はありません。
私の催眠療法のやり方は、子供時代にまで遡り、そして更に年齢を退行させて子宮の中にいた頃の状態や前世の事についても思い出すよう誘導して行きます。ここで大切なのは、どんなことが頭に浮かんでもあるがままを受け入れ、「良い・悪い」と価値判断しない事です。 いつものように退行催眠を行っていると、ある日不思議な事に、キャサリンは過去生の記憶らしき物を思い出し始めたのです。
すると、そのプロセスを通して彼女の病状は全て快方に向かって行きました。驚きはしたものの、その体験を契機に私もまた科学と直感の調和を探求し出したのです。 こうして、キャサリンとのセッションで、前世の記憶が蘇った状態を目の当りにした私は様々な事を学んだのでした。
それ以来2000人以上の患者を子宮の中や過去生への記憶へと退行させていきました。そして多くの症例を見て行くうちに確信したのは
「肉体は滅んでも魂は永遠に続いていく、つまり私達は死なない」と言う事だったのです。
私の手元には、催眠療法で得た臨床的なデータが多数あります。これらの内、幾つかのものは、裏付けもとれています。
私たち(の魂)は、この地球という場所で学ぶ事が無くなるまで、何度でもこの学校(地球)に戻って来ます。
つまり卒業するまでは、転生は繰り返されるのです(輪廻転生)。
不滅の存在である魂は、赤子の体に入り、生の終わりに体を離れます。
これは、あらゆる生きとし生けるものにあてはまります。私たちの本質は、肉体ではなく魂というエネルギーをもった存在なのです。
Weiss博士の症例報告
皆さんに退行催眠を体験していただく前に、何例か興味深い症例を紹介したいと思います。
症例1(前世での子供達)
ジェニーと私が出会ったのは、彼女が41歳の頃でした。
しかし、彼女は“81歳の息子”と85歳の娘”について、いきなり話しだしたのです。
彼女は幼い頃から、自分に前世がある事を知っていました。
4歳にして「アイルランドでの前世」をすでに語っていたのです。
彼女はイギリスで生まれて育ったのですが、前世ではメアリーというアイルランド人だったと言うのです。
そして、前世で彼女には8人の子供がいましたが、前世での夫は、無責任でギャンブル好き、とても子供の面倒など見てくれる人ではなかったと言います。
そして前世の彼女が若くして亡くなった時、子供が気になって仕方ありませんでした。 ジェニーの両親は、4歳の娘がいきなり「8人の子供がいて、夫が無責任で」などという事を言い出したので、とても驚きました。
輪廻転生などという事は信じてもいませんでしたから・・・。
ジェニーは4歳のころ教会の絵を描いたのですが、その教会の絵は正面がとても特徴的で、大きな白い建物と沢山ある窓が印象的な絵でした。
ジェニーはその絵を「前世で近所にあった教会だ」と言うのですが、両親はどうしていいか分からずそれ以上、追跡しませんでした。 やがて、ジェニーは成長し、結婚して2人の子供ができました。その頃から、ジェニーはアイルランドでの家族の夢を見るようになりました。そして、強く「何かをしなければ」と考える様になったのです。
そんなある日、彼女は、幼い頃に書いた地図と教会の絵を持って、図書館へ行くと彼女が描いた地図とそっくりな場所を見つけたのです。
そこはアイルランドの小さな村でした。彼女はすぐにそこを訪れたのです。その街に着いて、通りを歩いていた時、彼女は激しいデジャブーに襲われました。 そして、とうとう突き止めたのです!その家にはサットンさんという家族が住んでいました。
そして、そこにはかつて、8人の子供を持つメアリー・サットンという母親が住んでいて、8番目の子供を産む時に亡くなってしまったという
事まで分かったのです。 その家の近所には、ジェニーが描いた絵とそっくりな教会が建っていました。
彼女は、自分は50年前に住んでいた家に帰って来たのだ、とその時確信したのです。 この話はイギリスBBC放送がテレビ番組として追跡していましたが、街の人々の協力もあって、ジェニーは、子供のうち生存していた5名と再会する事ができました。
ジェニーは、その子供一人一人について、詳しく話す事ができました。
彼女の前世での夫は、彼女の死後、家を出ていってしまい8人の子供は孤児院で育っていたのでした。
8番目の子供は自分に兄弟がいる事すら知りませんでした。 この場合、前世での記憶に相当するものが実際に存在している事が立証されたのです。
この他にも「自分の墓を見つけた」というような例は多数報告されています。 このような前世の記憶は、ユングの言う集合的無意識にも説明が求められることもありますが、あまりにも詳細で具体的な場合がほとんどなので、
集合無意識での説明はあてはまらないと思います。
症例2(閉所恐怖症)
閉所恐怖症で苦しんでいた50歳の南アフリカの女性がいました。 この症状は子供の頃からの物でした。退行催眠の中で彼女はエジプトで奴隷だった過去生を思い出していました。ファラオの親類だった主人が死んだ時、生きたまま葬られた事を思い出したのです。
死後の世界でも主人に奉仕する為に何人かの奴隷が主人と一緒に生きたまま葬られるのが当時の風習だったのです。
締め切られた狭い墓の中で窒息する前に飲むようにと、奴隷達には毒薬が与えられていました。
この事を思い出した後、彼女の閉所恐怖症は治り二度と再発はしませんでした。
こうした症状改善のメカニズムは二つの説明が出来ると思います。
1つは、忘れていた、もしくは抑圧していた辛い思い出をその時の感情と共に思い出す事を医学用語でカタルシス(感情浄化)、
解除反応などと呼びますが、これは精神分析や伝統的心理療法の基本なのです。こうした無意識の中にある記憶を意識に蘇らせる事自体が症状の改善に非常に役に立つのです。 もう1つは『他の時代、他の体』にいる自分自身を体験し、
自分自身の死や生まれ変わりを何回も体験すると、自分の本質は永遠の魂であり単なる肉体だけの存在ではない事をはっきりと悟るようになると言う事実です。このように私達の魂としての本質に気付く事が強力な癒しをもたらすのです。 彼女は現在の両親と弟を過去生の記憶の中に見つけました。そして愛する人々と再会すると言う事も知ったのでした。愛する人もまた死ぬ事が無いのです。
症例3(子宮内退行)
これまで非常に困難な人生を送ってきた若いラテンアメリカ系の女性は、夫が突然の病気で亡くなった後、深い悲しみに押し潰されていました。
彼女は深いトランス状態へ入ってゆくと子宮を浸している美しい穏やかな光について感じ始めました。そして更に両親の愛と歓迎の気持ちを感じる事が出来たのです。 「私は全てを見ています。子宮の内も外も。私は本当に多くを知っています。全てを見、感じる事が出来ます・・・・・・。
もっと先まで見えます・・・・・・・・・・。私の人生に起こる出来事が見えます・・・・・・・。
困難に思えるような出来事にもみんな目的があるのです・・・・・・・・・・。 私が思っていたように偶然の出来事では無いのです。」
自分の人生の出来事について、より高い視点から確信を持って話していました。愛と光の意識を体験し、自分の人生プランと運命を認識した時、
彼女がずっと感じていた悲しみは消え始めました。子宮の中にいた頃の体験や記憶を
思い出す事によって今、彼女の人生観は大きく変わったのでした。 幼い頃のトラウマや人間関係が原因で生じた症状を持つ患者の場合、子宮の中にいた頃の記憶を取り戻す事は症状の改善に大きな効果があります。
こうした記憶は、生まれる前にも活発に活動している意識が存在する事、胎児や幼児は私達が思っているよりもずっと多くの事に気が付いている事を示しています。
私達の行動だけでなく、感情にも気付いているのです。 この事が分かれば私達は幼い子供達との付き合い方を考え直す必要があるでしょう。
私達の彼らに対する生まれる前後の愛と思いの流れは、彼らの魂を育み、その健全な発達に無くてはならない物なのです。
症例4(古代アラム語を話す子供達)
ニューヨークで2歳になる双子の男の子達が、二人で何やら聞いた事のない奇妙な言語でお互い話しあっているのを両親が発見しました。
それは、幼児が時々発する言葉よりずっと洗練され整然とした会話でした。
まわりの音や、テレビや電話をデタラメの言葉で呼ぶのでは無く完全などこかの言語を喋っていたのです。
両親はその言語を一度も聞いた事はありませんでした。
両親は、双子をコロンビア大学の言語学科に連れて行き、教授にその言葉について分析を依頼しました。その結果、子供達が使っていた言語は、
古代セム族の言語でキリストの時代にパレスチナ周辺で話されていた”アラム語”だと言うのです。しかも、現在はシリアの辺ぴな地方でしか使われていないと言うのです。
いくらニューヨークでもこんな古代語を深夜のケーブルテレビで覚える事は出来ませんし、ましてや何も知らない筈の2歳の幼児が話す事は常識では不可能なのです。 しかし、過去生の記憶庫からその知識を思い出す事も出来るのです。子供達は特にこの方法に熟達しているのです。
症例5(真性異言)
私のマイアミのオフィスに数年前、高名な中国の女性の医者が訪ねて来ました。この人は、英語を話す事は出来ませんでしたので、通訳を連れて退行催眠を受けに私の所に来たのです。 その退行催眠で、彼女はとても深い状態に入りました。そして2・3分もすると非常に鮮明に100年以上前のサンフランシスコの過去生を思い出しました。
その時、英語を話すことが出来ない筈の彼女がいきなり、英語のスラングを流暢に話し出したのです
(こういったケースは、真性異言として知られています)。 その時、通訳の方は何が起こったのか理解できず混乱して、今まで私に対して中国語から英語に通訳していたのに、逆に彼女が喋る英語を私に中国語に通訳し出したのです。
私は一瞬彼を見つめ、その必要が無いと彼に伝えました。彼のビックリした表情を見て、やっと彼が事態を理解した事が分かりました。
この様に何例かの症例報告とその質疑応答が終わった後、退行催眠の実習が行われました。
何人か希望者を会場から選び出し、直接Weiss博士が催眠誘導を行います。 この時はWeiss博士は急速導入法(rapid induction)を使っていました。
この方法だとあっという間に催眠状態へ誘導する事が可能なのです。
流石にWeiss博士は多くの症例を手がけているだけあって、今まで何度も退行催眠をかけてもらったけれど一度も過去生を感じた事が無いと言う人でも、何らかの体験があったようで、涙を流して感情を開放していました。何人かのデモンストレーションが終わると、次に生徒同士で催眠誘導を掛け合う実習へと移ります。 私の場合、外国人と組むと、何を誘導されているのか英語に集中しなくてはならないので
本当の意味でリラックスは出来ていませんでした。感じた事を話す時も、簡単な情景・イメージなら良いのですが、何とも表現しづらくなると、どう表現しようかと、どうしても英語を考えてしまい湧き上がってくる感情に集中しづらい難点がありました。
集団誘導
お互いの実習が何回か行われた後、今度はWeiss博士が生徒全員に対して催眠誘導を行いました。 今度はゆっくり全身をリラックスさせて行く段階的なリラクゼーション法です。優しいBGMの下、Weiss博士の柔らかい声が響いてきます。
目をそっと閉じましょう。そしたら呼吸に意識を向けましょう。 今日はあなたの想像力を思いっきり使って下さい・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 体に溜め込んだ緊張やストレスを吐き出し、美しいエネルギーを吸い込みます。するとあなたは一呼吸毎にどんどん深い状態へと導かれて行きます。 ・・・・・・そして外の騒音や他の気になる事もまた、あなたを更に深いレベルへと誘って行きます。あなたを邪魔する物は何もありません・・・・・・・・・・・・。
同時に全ての筋肉をリラックスさせましょう。まずは、顔と顎の筋肉・・・・そして首・・・肩・・・・腕・・・背中・・・お腹・・・脚・・・・・そしてもっともっと深い状態へと入って行きます。 ではあなたの頭上に美しい光を思い描いてください。その光は素晴らしい癒しの光、美しいエネルギーの光です。
この光をあなたの頭のてっぺんから体の中に入れましょう。するとあなたの体の全ての細胞、繊維、器官に平和と愛と癒しを与えて行きます・・・・・・・・。 癒しが必要な所には、その光がとても強力に働きます。
そしてあなたの全身は完全に光で満たされ、まるで光の繭に包まれているかのようです。 私が10から1へと逆に数える間にもっと深い状態へ入ってゆきましょう・・・。10・・・9・・・8・・・・・・2・・・1・・。
さあ、そこには美しい庭があります。平和で安全で愛に満たされた庭です。そこではあなたは全てを思い出す事が出来ます。
さあ、少しづつ昔へと戻って行きましょう・・・。私が5から1まで数えると子供時代の事を思い出して下さい。楽しい思い出の方がよければそれで構いません。その時の感情、気持ちなども一緒に全ての感覚を使って完全に思い出しましょう。」
私はその時、3〜4歳の頃、家の庭で空気を入れて作った小さな円形のプールで遊んでいる状況を思い出していました。
水鉄砲やお風呂用のアヒルさんなどで遊んではしゃいでいます。 暫くその状況を私の五感全てを使って再体験していました。
暫く時間を置いてまた次の誘導が始まります。「では、その思い出の上の方に浮かび上がって下さい、そのままその時間を離れます。
そしてその思い出も消えて行きます。 さあ、もっと時間をさかのぼって、あなたが生まれる前のお母さんの子宮の中にいた頃に戻りましょう・・・
もう一度5から1まで数を数えて行きます・・・。どんな事が起きようと構いません、一切判断したり批判したり分析したりせずに、
ただそれを体験して下さい。この人生を選んできた理由、この両親を選んできた理由がわかるかも知れません・・・・・。
母親や父親の感情や思いに気付くかも知れません・・・・暫くその感覚を味わってください。」
その時、私は真っ暗闇の中にいる自分を感じていました。暗い中に居るのですが、何とも言えない絶対の安心感があります。暖かく、守られていて心地よい愛情に包まれている感覚を感じていました。
「ではその場面から浮かび上がりその場面をそっと消してゆきます。
今度はあなたの前に美しいドアがあるのを想像して下さい。
これは前世へのドアです。私が5から1まで数を数える間にドアを通り抜けると、美しい光が見えてきます。
その光をくぐり抜けると光の向こうに情景、人、または何かの姿があるのに気付きます。
徐々に焦点を当てて行きましょう・・・・。
どんな履物を履いていますか?着ている物は?年齢は?性別は?・・・場所は?・・・時代は?・・周りに誰かいますか?・・・・・・・。
その時のあなたを良く感じて下さい。」
私は以前過去生退行で見た武士の時代の記憶を再体験していました。やはり同じ情景です。前回と少し違うのは、
武士が寂しそうに岩肌の海岸縁を歩いているシーンが加わったくらいでした。
「では、その場を離れてその人生の死ぬ場面へ行って見ましょう5・4・3・・・1。
その人生で学んだ事は何だったのでしょうか?感じてみてください。」
復讐の為に生きて来たけれど、結局その思いを果たす事は出来なかった。憎しみの思いで満たされた人生は寂しく、冷たくつまらないんだ。
愛が無い人生なんて味気なく、つまらないんだ。といったような思いが湧いてきていました。
「では、そろそろ帰ってきましょう、私が1から10まで数を数えると徐々にあなたの意識は戻ってきます。
1・・・・2・・・3・・・4・・・・・・・・8・・9・・・・・・10・・さあ、ゆっくりと目を開けて下さい。」
Weiss博士からのメッセージ
「催眠状態で体験した記憶が本物か、それとも想像や幻覚なのかどうして分かるのか?と良く私は聞かれます。 しかし、治療のレベルではその区別は全く重要ではありません。患者やセラピストが過去生を信じるか否かは問題では無いのです。
ただ、ここで体験した内容は驚くほど個人的であり、非常に鮮明で幻想よりもはっきりしている為、本人は強く感情的に動かされます。それはまた現在の当人の問題や課題を良く反映しているのです。このような非常に詳細な記憶については想像や幻覚、更には集合無意識や元型、遺伝子の記憶、などでは説明困難だと思います。 いづれにせよ、あなたが恐怖や怒りとその原因を本当に理解すれば、それらは解消してゆきます。あなたの心は再び開き喜びを感じるようになるでしょう。そして、癒しは『思い出』や『感情』の解放からだけでは無く、死についての気付きからも起こります。 その強烈な気付きがあった時あなたは死は存在せず、ただ肉体を離れるだけだと言う事を理解し始めるのです。
私達は生と死を超え、空間を超え、時間を越えた不滅の存在です。
そして自分の人生と魂の本質に関するより深い理解へと導かれた時、現在の生活に肯定的な変化がもたらされます。 この人生の自分の目的を思い出す事もあるでしょう。
そして、あなたは決まりきった日常の生活に囚われて未来や過去に対する不安や心配で疲れ、地位や外見、他人の評価などばかりを気にする代わりに、今の瞬間に生き、もっと十分に人生を生き始める様になります。 より幸せで喜びと愛に満ちた人生へと変って行くでしょう。
幸福は自分の内からやってきます、幸福は外側の物事や他の人々に左右されはしません。
安心と幸せの感覚が周りの人々の態度や行動に左右される時、あなたはもろくなり簡単に傷つきます。あなたの力を絶対に他人に明け渡してはなりません。 他人の意見に左右されるのは止めて自由になりましょう。そして物に執着するのではなく、人に愛と思いやりを持って接する事を大切にして下さい。人間は各々自分自身をお互いに物質的に分離したものと考えていますが、実は私達は皆お互いに?がり合っているのです。
この世界では物を通してではなく人との関係を通して学ぶのです。人間社会と呼ばれる大いなる学校での唯一のテストは怒りを手放して愛を受け入れる事です。愛は与えると共に受け取る必要があります。そして自分自身も愛するのです。愛は永遠であり、怒りは一時的です。怒りは自分が『良い・悪い』と判断する(決め付ける)ところに源を発しています。 私達は、その自分の基準を人に押し付けてしまい、人がその期待にそぐわない時、怒りを感じるのです。否定的で有害な感情や態度、自分自身の人生を苦しめる思い込みや考えを取り除き否定的な癖を手放すのです。 すると、私達は自分達の真の性質、肯定的で愛に満ちた自分自身を再発見するのです。愛は全てを超えた信じられない程強力なエネルギーであり、究極のヒーラーでもあります。その癒しのエネルギ−は急速に私達の体・心・そして魂を変革すると言う事を理解した時、私達はずっと苦しんできた痛みの病を克服できるのです。 愛は見返りを求めません。依存でもありません。絶対で無条件で時間の無い状態の事です。それこそが愛なのですから・・・・・・・・・・・・・・。」
Weiss博士の語りは非常に優しく精妙で穏やかでした。欧米人の声は通常大きく、日本人からみると威圧的に聞こえる事もしばしばですが、
そのような印象は全く受けません。むしろ日本人の様な控えめでソフトな語り口なのです。
いつまでたっても生徒達は皆Weiss博士の傍から離れようとしません。
休憩時間になっても、いつも生徒にとり囲まれて質問責めに会っていましたが、嫌な顔1つせず1人1人丁寧に答えているのでした。
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